木下古栗 『人間界の諸相』 (集英社)

人間界の諸相 (単行本)

人間界の諸相 (単行本)

カリスマ全裸公然わいせつナンパ師、早乙女アキラは股間にフェイクペニスの揺れるレザービキニのみを身につけ、柔らかなスポットライトに照らされた舞台にごく自然な歩みで登場した。
(中略)

「皆さんこんにちは、カリスマ全裸公然わいせつナンパ師の早乙女アキラと申します。とはいえ、私も基本的には捕まりたくないため、こんな格好で妥協しております」

現代の清少納言,菱野時江とその周辺の人々が起こす数々のハチャメチャを描いた短編集.全裸,勃起はもはや当たり前.ベローチェの抹茶ラテを愛する前大統領が「YES YOU CAN!」の叫びとともに勃起したジュニアの画像を取り出すだの,チノパンの下で押さえつけられる玉と竿の「位置情報」だの,カリスマ全裸公然わいせつナンパ師の公演だの.毎度のことながらひどい,というか品がないことこの上ない行為を軽快なテキストで謳い上げてゆく.そんな中で,「活字市場」は珍しく普通の奇想小説っぽさがあってびっくりすると同時に新鮮だった.(AVの)タイトルは長くないと売れない,といわれる意味がよくわかるであろう.