これまで、『自分に似合う服』が好きで――そういう基準で服を選んできた結果今のファッションになったという伊武が、折戸のために自分には似合わないと思っているガーリー系のファッションをしようとしている。
心寧にはそれが、伊武が自分の『好き』の気持ちを諦めたように思えたのかもしれない。
夏休み前、ショッピングをしていた星美と心寧のふたりは、成り行きで出会った女性の経営するカフェでアルバイトをすることになる。そこではふたりのクラスメイト、折戸が働いていた。女装男子であることがバレないようバイトをこなす星美は、折戸に想いを寄せるギャル、伊武のプロデュースをすることになる。
自称最強に可愛い女装男子と自他ともに認める陰キャ女子、ギャルをプロデュースするの巻。誰かに、あるいは自分に期待を寄せること、その期待に応えること。「期待」がいかに人間を動かすエネルギーであるかを描いた巻だった。最強女装男子と最弱ド陰キャの、遠慮のかけらもない会話の応酬が楽しいね。一巻に続いて前向きで力強いメッセージの込められた小説だった。
女装男子からギャルへのファッション指南は正直よくわからないところではあるんだけど、自信満々の女装男子が語るので説得力が強い。ポップティーンを参考図書に挙げるライトノベルは珍しいと思う。そういう意味でも読んでみるといい。
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