榛名丼 『レプリカだって、恋をする。2』 (電撃文庫)

この季節は、私の好きな人と同じ名前をしている。

そのせいか、昨年よりもずっと、私は秋が好きになってしまったように思う。

「レプリカ」とは、オリジナルがやりたくないことを押し付けらるためにどこからともなく生まれた存在。季節は秋。愛川素直のレプリカ、ナオと、真田秋也のレプリカ、アキは登校しようとしないオリジナルに代わって学校生活を送っていた。文化祭の準備をしていたそんなある日、学校にビラが撒かれる。「この学校には、ドッペルゲンガーがいる」。

レプリカが送る、はじめてのことばかりの秋と、恋の話。作者自身が一巻で完結させたつもりでいたとのことで、明らかに話し作りに苦労しているところが見える反面、各場面にゆったりとページを使っている印象を受けた。物語のキーとなる水彩画の感想に1ページの言葉を尽くすのはまだしも、スマートアクアリウム静岡の水族館デートや、文化祭定番のお化け屋敷の描写に10ページ近くを費やしたり、なかなか見ないページの割き方をしている。もともとデビュー作から端正な文章で、みずみずしい情景を描くことのできる作家なので、このスタイルは合っているのだろうなと思う。大きく話が動く場面は少ないのだけど、そこから齎される不穏で衝撃の強いラストは完全に予想外でびっくりした。なんというか、贅沢な読書をさせてもらったという気分になりました。



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