滝浪酒利 『マスカレード・コンフィデンス 2 詐欺師は少女と仮面仕掛けの旅をする』 (MF文庫J)

蒸気帝国、流空剣術近衛派(ウォルカルシャ)、伝承の奥義。

水が熱されて煙になる様に、人でありながら別の次元へ至る剣。

この世の全てから逃れ出て、この世の全てを断ち切る、蒸気の剣。

騎士団から逃げるため、クロニカを救うため、詐欺師のライナス=クルーガーは海の向こうを目指していた。双子の刺客に襲われたライナスとクロニカは、在共和国の蒸気帝国大使館に逃げ込み、蒸気帝国(エルビオーン)の巫女、アナヒトに助けられる。

詐欺師と貴族は十二年前の革命から逃れ旅に出る。シリーズ第二巻。大英帝国とインドのよくないところをあわせたような蒸気帝国(エルビオーン)、貧富と民族で強烈に分かたれた階層社会、エルフと資本主義の新解釈も楽しい。わりと力技なストーリーテリングもあり、やはりどこか非三大少年誌の少年漫画みたいなにおいがする。

戦争と革命が終わり、人ではないものによる法と正義(ロウ・アンド・ジャスティス)の時代が始まる。八極式金融武法や蒸気の剣といった胡乱なところが目立つし実際面白いと思うんだけど、実は異能バトルより「社会」を描くことに重きを置いているんじゃないかな。どこか儚いふたりのロマンスも気になるし、まだ荒っぽいけどいろんなところから味がする。今後が楽しみなシリーズになりました。