藍内友紀 『天使と石ころ』 (早川書房)

「どうして僕らだけ……」自分の声が聞こえてから、呻いたことを自覚した。「どうして子供(僕ら)だけが、こんなふうに扱われるんだろう」

アフリカ大陸、リベリアとシエラレオネの国境付近。七歳の少年、カラマは、村を燃やし、家族を殺したゲリラに拉致される。否応なしにゲリラの仲間にされ、カラシニコフを手にしたカラマは、子供兵士として虐殺と搾取と流転の世界に生きることになる。

その時々の自分勝手な大人に、国家に、世界の都合に。子供たちは生き方、考え方、体の発育までコントロールされる。ときに子供兵士、ときに天使として大人たちに扱われ、理不尽に転変する子供の価値観を、アフリカを舞台に描いてゆく。現実と地続きの物語ではあるけれど、SFの手法だからこそ許される描き方かもしれない。終章の最後の一行がこれほど重く感じられる小説はないと思う。最後の最後に示されたのは希望だったのか。とても良かったです。

「僕らの世界を創ろう」カラシニコフを掲げて宣言する。「子供と天使だけでも生きていける世界にするんだ。銃もダイヤもある。僕らはきっと、もう少し、マトモに生きられる」

そうだろ? と誰にともなく問うた僕の足下で、血に沈んだダイヤモンドが瞬いた。きっと可能性(神さま)ってやつが同意してくれたんだ。そんな気がした。