清水杜氏彦 『うそつき、うそつき』 (早川書房)

うそつき、うそつき

うそつき、うそつき

これから始まるのは、ぼくが身につけた技術を正しく使用しなかったせいで、どれだけの人間が死んでしまったかって話だ。
ぼくは倫理なんて捨てられかけたおかしな社会で生きていて、そこで毎日ろくでもないことをしながら暮らしていた。

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首輪の登場はこんなふうに人々のコミュニケーションの在り方を少々歪めることにもなった。
言葉にされない相手の感情についての「察し・思い遣り・推し量り」の余地が極端に狭くなってしまったみたい。

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国民管理のため,すべての国民に首輪型嘘発見器の装着が義務付けられてから数年が経った.報酬と引き換えに非合法に首輪を外すことを生業とする少年,フラノは様々な事情を抱えたひとの首輪を外していた.彼はある目的のため,とある首輪を装着したひとを探していた.
あるディストピア社会で苦悩する少年の正義を語る,第5回アガサ・クリスティー賞受賞作.嘘をつけなくなった社会がどのように倫理を失い,どのような歪みを抱えてしまうか.すべての国民が機械を騙す方法を模索するようになった社会の描き方はどことなく『PSYCHO-PASS』を感じる.ただ,首輪というアイデアから展開されたためか,物語的に都合のいいディストピアというか,オーダーメイドされたディストピアといった趣がある.社会を語る視点のほとんども少年の目を通したミクロなもので,そういう意味では描写も物足りない.ディストピア青春小説だから間違ってはいないんだろうけど,個人的には物語的な窮屈さのほうが勝ってしまう印象だった.