森橋ビンゴ『三月、七日。』 (ファミ通文庫,ISBN:4757718357)

運命に導かれるかのように出会い惹かれあう高校生三月(男)と七日(女).ところが.
全体的に.男主人公は比較的細かく心理描写がされているんだけど魅力不足,というか固まってない.シーンによって揺らぎがあるように感じられた.女主人公は(男から見て)魅力的ではあるんだけど具体性がない.ある意味「理想的に」描かれすぎてるきらいがある.作者が男性だから(だよね?),なのかな.そこが原因だろう,(含ネタバレ)後半,2人が双子だったと分かってから関係が落ち着くまでのそれぞれの心境の移ろいに対する説明が少なく(三月はともかく,七日の描写がほとんど無い)唐突に感じられた.『恋風』みたくどろどろさせろとは言わないが,この部分こそもっとページを割くべきところだったんではないか,と.前半の構成は面白いし,2人の「父親」へのスタンスの違いもよく描かれていたのに,それが結局ラストにそれほど響いてこなかった点も惜しい.
テーマはいいと思うんだけど,総じて惜しい.6.0.