扇智史 『永遠のフローズンチョコレート』 (ファミ通文庫)

永遠のフローズンチョコレート (ファミ通文庫)

永遠のフローズンチョコレート (ファミ通文庫)

装丁に関してはやたら評判が良く,内容に関してはやたら評判の悪い印象の本書.まあ実際,皆さんと似た感想になりますが,空虚な作品だなぁとは思った.どうすればこれだけ空虚に見えるのか不思議.ついでにオタクにしかわからないネタがところどころに使われているのだけど完全にストーリーラインから浮いている.
とかさんざん書いておきながらアレなんだけど,私はこの作品そんなに嫌いでもない.ここからは個人的な思い込みの領域に入るんだけど,作者はモラトリアム小説のカリカチュアとしてこの作品を書いたんじゃないかなぁとか思ってしまったのですね.そうでもなければこうまで内容の無い小説は書けないのではないか,と.作者が自分で書いてるではありませんか,「言葉なんて嘘っぱち」って.ここまで含蓄ありげな言葉を重ねながらこんなにも薄い,空虚な存在なんて,まさに読者層(含自分)を暗示しているようなものではありませんか.この本をつまらないというお前は,自分の存在をつまらないといっているのと同じことなんだよ,という作者の意地悪なメッセージが聞こえてくるようではありませんか! せんか?
まあ妄想だけどね.前述のように私は決して嫌いじゃないんだけどひとにはあまり薦められないかな.