冲方丁 『マルドゥック・ヴェロシティ 3』 (ハヤカワ文庫JA)

マルドゥック・ヴェロシティ 3 (ハヤカワ文庫JA)

マルドゥック・ヴェロシティ 3 (ハヤカワ文庫JA)

櫛の歯が欠けるように消えていく09メンバー.ボイルドの失墜,そしてウフコックとの訣別.悲劇は承知の上だった筈なのに,この喪失感と涙腺への刺激はどうしたことか.起こった事実の記述・伏線の回収と,本来ならウェットに書かれるべき仲間の死を同列に扱うような描き方が,命のあっけなさと無情さをさらに掻き立てつつも,「なんとか読んでいられる」効果を仕立て上げていたのかもと今更ながらに思った.ニュアンスは少し違うけど id:ds44 さんの 「正直、この一切の感情移入を拒む簡素で無機質な文体でなかったならば、彼らに与えられる絶望的な末路を読み続けるのは難しかったかもしれないと思わせるほどだ。」*1 との意見に同意です.
良い意味でも悪い意味でも期待以上の,大傑作だった.