有川浩 『塩の街 wish on my precious』 (電撃文庫)

塩の街―wish on my precious (電撃文庫)

塩の街―wish on my precious (電撃文庫)

有川浩は短編を読んだことはあったけど単行本はこれがはじめて.店頭でハードカバー版が出たことを知り,そういえば文庫版は手元にあったはずと,積み本の中から引っ張り出してきた次第.発売日に買ったソフトを封も開けずに放っておいたら追加要素の加わったベスト版が半年後に出てじりじりしながらも仕方なくほぼ同一のソフトをもう一本購入するといった頭の悪い消費行動をゲームソフトにおいて何度もやってきた私ですが,積み本で似たような目に遭ったのはこれがはじめてかもしれない.
物語としては「セカイをとるか,自分をとるか」の広義のセカイ系? 昔はこういった「舞台を整える(シチュエーションを作る)ためならなんでもあり」な話には強烈な違和感を覚えたもんだけど,ここ何年かですっかり訓練されてきたため,こういうのもアリだよねーとすんなり受け入れられるようになった.いいことなのか悪いことなのかはよく分かんない.独特の硬質な文体で錯覚したけど,やってることは恥ずかしいくらいに一直線な青春ものなのね.世界観のわりには SF 的側面が中途半端なこと,力技で情に訴えるような描写がかなり強いことに多少の違和感があった.