神戯-DEBUG PROGRAM-Operation Phantom Proof (講談社BOX)
- 作者: 神世希,mebae
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2010/12/02
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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このセカイが、全て原初より定められた決定論に従う、決まりきったセカイであるのならば、そこは究極の万物理論、ラプラスの悪魔が支配する完璧なセカイだろう。
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如何なる綻びもなく、常に安定したセカイ。
未来永劫、あらゆる不確定性が排された、完全なる理想郷――
だが、ならばそこにはヒトは存在しないだろう。全てが決められた世界に自由意志など存在しない。そこにあるモノはすべて、たとえヒトと同じ有機生命体であろうと、セカイを維持するためだけの装置、ただの機械だ。プログラムされたゲームのキャラと変わらない。可能性のないセカイにヒトは生まれない。だが可能性を持ってしまったセカイは、同時に不完全であるが故にまた――
深夜の学校の屋上.忘れ物を取りに行ったおれは,トーマと名乗る少女と出会う.自分がサツジンキであると言うトーマ.翌日,おれのクラスにトーマそっくりの転校生,神世希がやってくる.トーマと希は果たして同一人物なのか.時期を同じくして,学校に「殺人姫」が現れるという噂が立ち始める.
ヒトのセカイは綻びだらけの万物理論では縛られない.第2回講談社BOX新人賞Powers受賞作.二分冊で1000ページを超えるボリュームの学園密室殺人,と見せかけて.なんかいかにも講談社BOXっぽいというか,講談社らしい新人というか,底抜けなミステリ大作だと思う.学園の日常を一から十まで描いているので,やたら進みが遅い(特に前半)のはエロゲに影響を受けたものだと思うのだけど,わざとやっているのかがよく分からない.ただ,エロゲやアニメ,ラノベ,SF,ミステリなど各方面のネタをぶっこみつつ,全編に渡る言葉遊びとタイポグラフィ(現時点での電子書籍化はまず無理だろうなあ)が楽しくて,分厚いけどするすると読める.個人的に大好きだけどひとにはおすすめしない,というタイプの小説ではある.けど,お遊びを徹底しながら,これだけの物量をまとめあげたのは凄いことだと思うんだよね.分厚いからといって敬遠している場合ではなかった.続篇(なのかな)も出ているようなのでとりあえず買っておきます.