神世希 『神戯 ―DEBUG PROGRAM― Operation Phantom Proof』 (講談社BOX)

神戯-DEBUG PROGRAM-Operation Phantom Proof (講談社BOX)

神戯-DEBUG PROGRAM-Operation Phantom Proof (講談社BOX)

このセカイが、全て原初より定められた決定論に従う、決まりきったセカイであるのならば、そこは究極の万物理論ラプラスの悪魔が支配する完璧なセカイだろう。
如何なる綻びもなく、常に安定したセカイ。
未来永劫、あらゆる不確定性が排された、完全なる理想郷――
だが、ならばそこにはヒトは存在しないだろう。全てが決められた世界に自由意志など存在しない。そこにあるモノはすべて、たとえヒトと同じ有機生命体であろうと、セカイを維持するためだけの装置、ただの機械だ。プログラムされたゲームのキャラと変わらない。可能性のないセカイにヒトは生まれない。だが可能性を持ってしまったセカイは、同時に不完全であるが故にまた――

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深夜の学校の屋上.忘れ物を取りに行ったおれは,トーマと名乗る少女と出会う.自分がサツジンキであると言うトーマ.翌日,おれのクラスにトーマそっくりの転校生,神世希がやってくる.トーマと希は果たして同一人物なのか.時期を同じくして,学校に「殺人姫」が現れるという噂が立ち始める.
ヒトのセカイは綻びだらけの万物理論では縛られない.第2回講談社BOX新人賞Powers受賞作.二分冊で1000ページを超えるボリュームの学園密室殺人,と見せかけて.なんかいかにも講談社BOXっぽいというか,講談社らしい新人というか,底抜けなミステリ大作だと思う.学園の日常を一から十まで描いているので,やたら進みが遅い(特に前半)のはエロゲに影響を受けたものだと思うのだけど,わざとやっているのかがよく分からない.ただ,エロゲやアニメ,ラノベ,SF,ミステリなど各方面のネタをぶっこみつつ,全編に渡る言葉遊びとタイポグラフィ(現時点での電子書籍化はまず無理だろうなあ)が楽しくて,分厚いけどするすると読める.個人的に大好きだけどひとにはおすすめしない,というタイプの小説ではある.けど,お遊びを徹底しながら,これだけの物量をまとめあげたのは凄いことだと思うんだよね.分厚いからといって敬遠している場合ではなかった.続篇(なのかな)も出ているようなのでとりあえず買っておきます.