オルダス・ハックスリイ/中西秀男訳 『猿とエッセンス』 (サンリオSF文庫)

猿とエッセンス (1979年) (サンリオSF文庫)

猿とエッセンス (1979年) (サンリオSF文庫)

第三次世界大戦で世界は廃墟と化した。たった一つ戦禍を免れたニュージーランドからアメリカ再発見隊の一行がカリフォルニアに上陸した。2108年2月20日のことである。

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文明崩壊後の未来世界を,ある脚本家の書いたシナリオという形で表現したディストピア小説.ロサンゼルスはベリアルを崇拝する野蛮人たちに支配される管理社会と化していた.私が知っているものだと「猿の惑星」やロイス・ローリー 『ザ・ギバー 記憶を伝える者』とか,その辺に近い.オリジナルの出版が 1948 年,更に手垢がつきすぎた題材なため単体で評価するのは難しいなあ.悪魔の実在について大司教が語る中盤が山になるのだろうけど,司教の厭世観は伝わってくるものの,語られる内容はディストピア小説でよく見られる思想なだけにいま読んでもうーん,としか.訳者があとがきに書いたように,作者は人物をキャラクターとしてではなく,自分の思想を世に伝える道具として描くことに腐心した節が見える.そのため当時は知らないけど今となっては純粋に小説として面白いとはあまり言えないかな,と.