餅月望 『ある朝、ヒーローの妹ができまして。』 (スーパーダッシュ文庫)

ある朝、ヒーローの妹ができまして。 (集英社スーパーダッシュ文庫)

ある朝、ヒーローの妹ができまして。 (集英社スーパーダッシュ文庫)

ユエちゃんの世界、未来世界の話を聞いた俺は、なぜ、父さんたちが彼女をうちに送ってきたのか理解できたような気がした。
全てが平等で、争う理由が何一つ存在しない世界。それはなんて……。
なんて、おぞましい世界なのだろう。
確かに争いも、殺し合いも起きはしないだろう。なぜなら、愛憎は人間の世界のものだからだ。
誰も憎まず、誰も愛さず、感情を動かされることもなく、友達も、恋人も、親もない何者か。
それは、本当に人間と呼べるのだろうか?

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高校生の貴樹には,立場は違えどかつて英雄だった三人の妹がいる.宇宙人のキャスティア,超能力者の凛,異世界人のフローラ.両親が留守がちのため,ほとんど四人暮らしの一家に,新しく「未来人」の妹が増えることになり.
ヒロインの平均年齢の低さに定評のある作者が送る新シリーズは,訳ありの妹たちとの家族もの.ディストピアからやってきた少女を迎え入れる家族の優しさにふんわりする.主人公である兄貴の目線や,互いが互いを思いやる丁寧な描写に救われる気分になる.女の子個々人の描き方やも非常に魅力的.SF 色の濃い世界観は「小学星のプリンセス☆」や「ロイヤル☆リトルスター」とゆるやかにつながっているのかな.過去の作品と比べると SF 色は薄めな気もするけど,必要最低限で,それでいてしっかりした説得力を持たせようとしているのが分かる.
ってことで良いものでした.女の子の平均年齢は低いのに,作品のアベレージはマジで高いなあ.