ソムトウ・スチャリトクル/冬川亘訳 『スターシップと俳句』 (ハヤカワ文庫SF)

スターシップと俳句 (ハヤカワ文庫 SF (580))

スターシップと俳句 (ハヤカワ文庫 SF (580))

「われわれは建設者ビルダーではなくて」とクジラ。「夢想者ドリーマーなのさ」そう言ってクジラは暗い海へと身をひるがえし、去っていった。

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終戦争後,滅びを間近に控えた世界において壊滅を免れた日本.ハワイで生まれ育った日系人兄弟のジョッシとディディは新世界を求め日本へ旅立つ.一方,生存大臣の娘・リョーコはクジラとのファーストコンタクトを果たし,驚くべき日本人のルーツを知ることになる.
面白かったー.自らの手による潔い最期を美徳とする「日本的」な価値観と,生きて新しい世界を望む主人公たちの対決が熱いこと熱いこと.「日本人」リョーコと自分の中の日本人の血を忌み嫌うジョッシとのボーイ・ミーツ・ガールの趣もあり,ていうかバカバカしく狂った「日本」の姿やクジラ,アイシマほかで装飾されているけどこの熱さは青春小説のそれだよね.それもかなり現代的で青臭くて.いやもう堪らんかった.
読んでて思ったんだけど,海猫沢めろんの『零式』はもしかしてここからモチーフをとってたりするのかな.戯画化された日本像しかり,閉塞を打ち破らんとするパワフルさしかり,通じるものが多かったように思う.『零式』が好きなひとだったら探して読んでみる価値もあるかもよ.