マイクル・コーニイ/山岸真訳 『ハローサマー、グッドバイ』 (河出文庫)

ハローサマー、グッドバイ (河出文庫)

ハローサマー、グッドバイ (河出文庫)

夏の休暇を過ごすため,政府高官の父と母と港町パラークシへと向かった少年ドローヴ.宿屋の娘ブラウンアイズとの一年ぶりの再会を果たし,愛を深めていく二人とは対照的に,町には徐々に不穏な空気が流れ始める.地球のようなどこかの惑星を舞台にした,とある少年のひと夏の経験.
流行に乗って読みますた.これはよいビルドゥングスロマン.生意気なガキどもが冒険して,大人たちの社会に触れて成長して,をじっくり描いている様は王道のジュブナイルでもあり,SF としても「異星人の住む惑星」を彩る数々の舞台装置は結末へと確実に収束する仕掛けが素晴らしい.じわじわと暗い影が落ちていくパラークシのなかで有機的に変化するドローヴと周囲との距離の描き方も恐ろしく丁寧,最後まで引き込まれた.そして「ほんとうの最後の最後」に用意された「SF 史上有数の大どんでん返し」には目から鱗が落ちた.……っても初読ではさらっと読み流してて,あとがき → 再読でやっと気づいたんだけどさ.私はやっぱり SF じゃないのだなあ,とかさ.とまれかくまれ面白かったです.