唐辺葉介 『PSYCHE』 (スクウェア・エニックス・ノベルズ)

PSYCHE (プシュケ) (スクウェア・エニックス・ノベルズ)

PSYCHE (プシュケ) (スクウェア・エニックス・ノベルズ)

飛行機事故で両親と姉を失った美術部員の「僕」.ところが死んだはずの家族がなぜか家の中を歩き回っていて,僕以外のひとにはその姿は見えなくて.
単純に言えば脳内世界と現実の自分が折り合いをつける話.わりと好みの文体でするする読めて面白かったのだけど,いっかい読み終えてからパラパラと読み返してみるとあらすじとして書ける内容は恐ろしく希薄なことに気づく.とはいえそれが悪いということではなく.「死」のイメージの描き方や,妄想だか夢だかと現実とがいつの間にか混ざり合っている/不可分になるあたり,筒井康隆の『敵』を 60 年くらい若返らせるとこんな感じになるんじゃないかと思ったがどうか.ネタとしては最近よく使われるものを,エンターテイメントとしてしっかり消化して描いている印象はあった.