深見真 『僕の学校の暗殺部』 (ファミ通文庫)

僕の学校の暗殺部 (ファミ通文庫)

僕の学校の暗殺部 (ファミ通文庫)

三つめの切実な話。
零士は、自分が通っている高校に暗殺部なんて活動があることを初めて知った。
四つめの切実な話。
そして、暗殺部に勧誘されてしまった。
五つめの切実な話。
女の子を好きになってしまった。
身長は、彼女のほうが七センチも高い。おまけに彼女は人を殺したことがある。これからも殺していくだろう。

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157 センチしかない身長にコンプレックスを抱く高校生,深作零士は,ある日,人が人を殺す瞬間を目撃してしまう.殺されたのは初老の紳士,殺したのは隣のクラスの未但馬裕佳梨.裕佳梨はその場で零士を正袈裟高校暗殺部にスカウトする.暗殺部の目的は,脳に〈いるかの子ども〉を宿した〈いるか人間〉を排除すること.
銃を手に,暗殺に命をかける青春の日々.部活ものの極北とも,究極とも言えそうな気がする.銃の感触や,はじめて発砲したときの手応えの描写が,今までになく精緻な気がする.しかし何より素晴らしいのは暴力と不条理が絡み合う描写.〈いるか人間〉や〈地球コブ〉という不条理な存在をしれっと出し,そのバカバカしく不条理な行動原理の元で,笑うしかないような暴力をすげーカラッと描いている.なるほど,筒井康隆のようであり(個人的に連想したのは「死にかた」ですが),作中引用されるカミュのようでもあり.三島由紀夫寺山修司ウィリアム・バロウズらを絡めたテキストもこの上なく格好良い.
物語の設定は同レーベルで完結した前作『疾走する思春期のパラベラム』(感想一覧)の延長線上にあると思うのだけど,一歩も二歩も先のレベルに進んでいることは断言できる.タイトルやレーベルに騙されることなかれ.傑作です.