小柳粒男 『ゲンソウ現実日和』 (講談社BOX)

ゲンソウ現実日和 (講談社BOX)

ゲンソウ現実日和 (講談社BOX)

『くうそうノンフィク日和』『りべんじゃー小戦争 〜まち封鎖』に続く,流水大賞受賞の魔女と異世界の物語,シリーズ第三弾.「小戦争」が地域社会とひとりのサラリーマンに与えたトラウマと,その後の顛末をとりとめなく描く.
シンプルな復讐と殺戮の話だった前作に比べると,こちらは一転わやくちゃでまとまりがない.各章が断裂していて,そもそも「主題」があるのかもよく分からない.でもこれが「ゼロ年代のハードボイルド」だと言われればまあそうかも,と納得できるような一定の説得力は持っていると思う.所帯じみているのにドライなダメ人間たちの描き方とか.青春ものでありながら登場人物それぞれの深いところまで踏み込まないとか.話はともかくスタイルは一貫しているのがいい感じ.ひとを選びそうではあるけど私は嫌いじゃない.今年中に出るらしい続編も楽しみに待ちたいと思います.