唐辺葉介 『犬憑きさん 上』 (スクウェア・エニックス)

犬憑きさん 上巻 (スクウェア・エニックス・ノベルズ)

犬憑きさん 上巻 (スクウェア・エニックス・ノベルズ)

「必要ないわ。あんたの世界はあんたの世界。あたしにはあたしの世界。何が見えようが、見えまいが知ったことじゃない。そうでしょ?」

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『PSYCHE』で華々しくデビュー(?)を飾った作者の第二作.ガンガンONLINE で連載された,憑きものをテーマにした連作中篇集.いじめの復讐のため蟲毒に手を出し挙げ句の果て飼い犬に手をかける女子高生の話「蟲毒」,管狐に憑かれているが故に他人と上手く関係を結べない女子高生の話「管狐」,山の神による連続殺人「反魂」.表紙はこんなだけども中身はやりすぎなくらいきちんとエグいのでファンにも安心.じくじくと膿んだ人間関係とそれを産む/それによって産まれる呪いのスパイラルは徹底して悪趣味,かつ悲しさを併せ持ったもの.この手の露悪はあまり得意ではないはずなのだけど,容赦のない描写からは目を離すことができなかった.個人的に良かったのは「管狐」.重苦しい空気にずっと支配されたあとにあの脱力もので微笑ましく,そして裏に悲しさをはらんだラストを持ってくるのは反則だと思うんだ.
あとカバー裏の仕掛けは知らずにめくるとぎょっとすること受け合い.ちょっと感心した.みんなもめくってみるといい.5 月に出るらしい下巻も買うよ.