リチャード・キャドリー/川野靖子訳 『サンドマン・スリムと天使の街』 (ハヤカワ文庫FT)

サンドマン・スリムと天使の街 (ハヤカワ文庫FT)

サンドマン・スリムと天使の街 (ハヤカワ文庫FT)

「おれたちよりハンサムな野郎どもに乾杯。やつらが先に死にますように」

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スタークは 11 年ぶりにロスに帰ってきた魔法使いである.彼の目的はただひとつ.裏切りによって自分を地獄に落とし,11 年の文字通り地獄の日々を送る原因を作った,そして唯一の恋人を殺したかつての仲間たちに復讐を果たすこと.
地獄から蘇った魔法使いにして「怪物を殺す怪物」,サンドマン・スリムことジェイムス・スタークの復讐劇.現代のロスを舞台にしたノワールでハードボイルドなファンタジー.ボンクラ男子向けファンタジーとどっかで聞いて手に取ったのだけど,これはいささかボンクラが過ぎるような.冒頭で最初のターゲット,カサビアンの×を問答無用で××したシーンは「おっ」と思ったけど,そこからが長かった.お使い RPG のように手続き踏みながら小出しに進むシナリオはいまひとつ盛り上がらない.地獄や天使のイメージは小市民的だし.なにより復讐鬼たるスタークさんが粗忽すぎる.11 年ぶりの故郷の変化に戸惑ったり「インターネットって何?」とジェネレーションギャップ(?)を発揮したりするのはともかく,うっかりミスやらカッとなっての行動やらが多いのはいただけない.しかも失敗を繰り返しつつ本人は反省の色なし.感情移入出来ないのよなぁ.いじめられ続けるカサビアンのほうがずっとかわいそうに思えてしまうよ.