陸凡鳥 『サキちゃんと天然さん』 (ガガガ文庫)

サキちゃんと天然さん (ガガガ文庫)

サキちゃんと天然さん (ガガガ文庫)

「チッチッチッ。……ナンセンス。ふざけるのが私たちの仕事だ」

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時に西暦二〇××年.世はジョーカーと呼ばれる講談師たちの活躍が華やかなりし時代.サキちゃんこと火花咲樹はトークバトルに敗北した父親の借金の形に売り飛ばされた悲劇のヒロイン.父の無念を晴らしたい.悪漢どものもとから脱走したサキちゃんは,一流のジョーカーになるべく,トーク・バー「黒豹」の門を叩いたのでした.
陸凡鳥の新シリーズは帯曰く「ライトノベル史上初・ほんわかトークバトルコメディ」.脱衣麻雀の「とりあえず麻雀で勝負よっ」を「とりあえず話芸で(ry」に置き換えるとわかりやすいと思う.話の肝となるトークバトルは,テーマに沿ったしゃべり(小噺)を先攻後攻を決めて一対一で披露,トークバトル専用デバイスからサーバーを経由させると両者の「面白さ」が数値ポイント化され,その時点ではっきりとした勝敗が決まる,というもの.トークの面白さという曖昧なものの優劣を競う,とっかかりのアイデアはいいとしても,そこ以外は詰めの甘さばかりが目立つ.「すべらない話」的な「話芸」は言っちゃなんだけど「面白さ」のポイントがよく分からないし,そもそも点数化して優劣・勝敗をつける基準が読んでてまったく分からない.それだけでもじりじりするのに,終盤でポイントに実は大した重要性がなかったことが明かされるに至ってはさすがにずっこけた.「七歳美郁」シリーズは好きな私だけどこれはちょっとないわー.せめてもうちょっとだけでも煮詰めてから世に出してほしかった.