東亮太 『妄想少女 そんなにいっぱい脱げません!?』 (スニーカー文庫)

それに──よく分からないのだ。「萌え」と「エッチな気持ちになること」は違うのだろうか。
いや、違うと言われれば違う気もするけど、じゃあどの辺が違うかと訊かれると、これがさっぱりなわけで。
もしかしたら、自分達が追い求めている「萌え」とは、想像以上にとてつもなく巨大なものなのではないか。光宏はふと、そんな不安に駆られる。

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光宏はオタクの高校生.カリスマイラストサイトのミラージュ・ネルの更新に日々ハァハァする彼も,かといって二次専というわけではなく,学校一の美少女・紗衣に告白して見事に撃沈.消沈する彼の目の前に,ミラージュ・ネルのイラストの女の子がディスプレイの中から立体化して現れた.
「萌え」とは一体なんだろう.強い妄想の力でイラストの女の子を(なぜか)具現化できるようになった高校生を中心に置き,お約束のシチュエーション・キャラクター・属性を少し離れたところから描き解題して見せる.第 10 回スニーカー大賞奨励賞受賞作「マキゾエホリック」でデビューした作者の第二シリーズ.前も書いたけど,あまりにお約束なドタバタした周辺と,やけに冷静に観察する語り手との距離感というか温度差というか,どこか谷川流に似たところがあると思うんだよな.「マキゾエホリック」では学園もの,こちらは「萌え」に焦点を絞って,という違いはあれどやっていることは良くも悪くも変わっていない感じ.ってことで面白かったのだけど,テーマ的にあまり広がりそうな気がしないし,出来れば「マキゾエホリック」の続きが出てくれないものかにゃーという淡い期待を捨てたくない私ガイル.