原田源五郎 『今日もオカリナを吹く予定はない 3』 (ガガガ文庫)

今日もオカリナを吹く予定はない3 (ガガガ文庫)

今日もオカリナを吹く予定はない3 (ガガガ文庫)

「……井波、いったい何の話をしているんだ?」
「ん? ああ、今からエビマヨ君に教えようと思ってね」
「何を?」
「死角とは何なのか、見る目がある人とは何なのか、そしてこの世界が何なのかをね」

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ある朝,オカリナ部員でムッツリスケベのエビマヨがふと覚めてみると,透明人間に変わってしまっているのに気がついた.なぜなら彼は死角になっていたから.死角は見る目のある人にしか見えない存在だから.
ガラクタの寄せ集めのような姿の「死角」になってしまったエビマヨの運命はいかに.お気楽部活コメディかと思いきや,サイバーパンクコメディであることが二巻ラストで明かされた,本シリーズの完結編.ボケとツッコミのハイテンポな応酬が楽しく,特に一人称の使い方が際立っていた.「死角」になったことで徐々に人間からずれていくエビマヨ(語り手)の感覚の描き方が,ただでさえずれている地のボケと上手に相まって不思議な感覚を生んでいる.この書き方,というか作者でなければ出せなかった味であることは間違いない.話の締め方も上手かった.おそらくこれがベストの〆であろうなあ.
ってことで楽しませていただきました.次回作が出るのを楽しみにしています.