小川一水 『天冥の標VI 宿怨 PART1』 (ハヤカワ文庫JA)

天冥の標6 宿怨 PART1 (ハヤカワ文庫JA)

天冥の標6 宿怨 PART1 (ハヤカワ文庫JA)

「恨んだり憎んだりするのはさ、とても楽しいんだよ、イサリ」

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西暦 2499 年.人口宇宙島群スカイシー 3 で遭難した《救世群》(プラクティス)の少女イサリは,《非染者》(ジャームレス)の少年アイネイアに助けられた.ふたりの出会いが,太陽系に大きな転換をもたらすきっかけのひとつとなる.
500 年に渡る宿怨が,太陽系に散らばり,多様化した地球人類の間に暗雲をもたらす.全 10巻予定のシリーズも折り返しとなる 6 巻.ひとつの集大成になるため,ここまで出てきた用語や人物も盛りだくさんなのだけど,非常に簡潔で読みやすく展開されてゆく.ってか覚えのある単語が出てくるとちょっとうれしくなるよね.わくわくすることこの上ない.
個人的におっと思ったのが第二章「女主人の朝」の後半.《救世群》(プラクティス)《恋人たち》(ラバーズ)《酸素いらず》(アンチ・オックス)という者たちが,各々の役割で探索し,倫理兵器(エチック・ウエポン)と戦う,という展開・描写が,Wizardry か「世界樹の迷宮」か,「俺の屍を越えてゆけ」という感じで非常に燃える.こういう役割分担が,今後の物語につながっていくのだろうなあと想像すると楽しい.