大間九郎 『オカルトリック 02』 (このライトノベルがすごい!文庫)

オカルトリック 02 (このライトノベルがすごい! 文庫)

オカルトリック 02 (このライトノベルがすごい! 文庫)

「僕はねえさんを欲します。
僕はねえさんと一緒にいたいと思います。
僕にはねえさんが必要です。
僕はねえさんと共に生きていきたい、心からそう願います」
「それが彼女の苦痛だとしても?」
「そうですね、それがねえさんの苦痛だとしてもです」
「それは罪かもしれないんだぜ?」
「罪でもいいですし罰を受けてもいいのです」

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一緒に生きて、一緒に悲しみ、一緒に憤り、一緒に痛みを感じよう。
一緒に笑い、一緒に喜んで、一緒に歩いて行こう。
幸福は僕のなかにもなく、君のなかにもなく僕と君が重なり合ったところにあるんだ。
悲しみは雨のように降りそそぎ、さす傘はないけれど、君と繋いでいる手のひらは決して濡れない。
悲しみは朝靄のように身体に纏わりつき振り払えないけれど、君と抱き合っている胸に朝靄は入り込めない。
悲しみは幸福で埋めよう。悲しみは温もりで抗おう、悲しみに二人で立ち向かおうよ。僕は君と生きたいんだ」

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イソラの姉,舞花が失踪した.イソラに助けを求められた狐憑きのオカルト探偵・玉藻は,いっしょにイソラの別荘に向かう.その先で泊まったペンションで,玉藻は「ロードランナー」を名乗る念写の使い手に,ある依頼をされる.
詩のような小説のような,愛と幸福の物語.メンヘラで貧乳のイソラさんが主に描かれる.幻覚なのか幻想なのか,夢か現実かがあいまいに描かれる場面すべてが,愛と幸福を語るという一点のために語られている.繰り返し繰り返し,抉るように描かれている.「いろんな信頼を失うだろうが,でもこれが書きたかった」というだけあって,技術とか物語があるのとはまた別のレイヤーから全力で叫んでいるような印象を,全体から受けた.うまく言葉に出来ないんだけど,これはすごいヒリヒリするんだよ.パッケージを変えれば売れる作品になると思うんだがなあ.読んだひとがどのような印象を受けているか,感想をいろいろと聞いてみたい.