ツカサ 『銃皇無尽のファフニール I ドラゴンズ・エデン』 (講談社ラノベ文庫)

「それはつまり――いざという時は、兄さんがイリスさんを殺すという意味ですか?」
俺を強い眼差しで見つめる深月。
「ああ。ただしいざという時がいつなのかは俺が決める。それまでは誰であろうと、絶対にイリスを殺させない」

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25年前.何の前触れもなく現れた怪物たち,「ドラゴン」によって世界は一変した.それと前後して,ドラゴンと同じ力を持った子供たちが生まれ始める.“D”と呼ばれることになった少女たちは,ミッドガルという孤島に隔離され,ドラゴンと戦うための教育を施されていた.
七体のドラゴンが飛ぶ世界,南海の学園,生まれつき異能を持った少女たち,なぜかひとりだけいる男(主人公).導入部のご都合主義による畳み掛けのスピードが凄まじく,ああ自分はいま「最近のラノベ」を読んでいるんだなあ……という変な充実感を味わう.しかし,力を入れているシリーズらしく,情報はしっかり整理されていることがわかってくる中盤から後半で楽しくなってくる.力とはすなわち情報であり兵器である,ただしそれだけでは戦うことは出来ない,という明快に示されるテーゼや,ドラゴンと戦うことと人間と戦うことの違いといったあたりを明確に峻別しているのも良かった.巻を重ねるとどうなるかはまだわからないけど,これだけ整理されているなら悪くはないんじゃないかな.しばらくは追いかけてみます.