からて 『マカロン大好きな女の子がどうにかこうにか千年生き続けるお話。』 (MF文庫J)

「帰らないで。もっと遊ぼう」
「ふん。あんたがそう言うなら遊んであげてもいいけれども」
「やった! ありがとうぺろぽろぱらぽんちゃん」
「ふ、ふん。そんなお礼なんか言われても全然嬉しくなんか無いんだからね!」
ぺろぽろぱらぽんちゃんの三十五個の顔のうち、二十四個は笑みを隠せずにいた。うう、かわいい。

ぱらぽろぷるんぺろぽろぱらぽん

「ネット小説界の新星」による四本の連作短篇集.表題作「マカロン大好きな女の子がどうにかこうにか千年生き続けるお話。」は,時空の穴に転がりこんで千年後の世界へ行ってしまったみーこに会うため,不老不死になった女の子が千年生き続ける,タイトル通りのお話.奇病の大流行で絶滅しかけたり,宇宙へ脱出したり,謎の宇宙生命体とのファーストコンタクトで繁栄したり虐殺されたり,ついには宇宙の外側へたどり着いたり,という人類史をほわほわした編年体で語る.北野勇作チャールズ・ストロス田中ロミオを足したような短篇(異論は認める).ある宇宙人同士の天文学的スケールの恋を描く「ぱらぽろぷるんぺろぽろぱらぽん」も愉快で不思議な良い短篇.触手と分泌液に興味があるけどホラーは苦手な諸兄に最適だと思う.不治の病を抱えた山田太郎と水商売を首になった山田花子のひと夏の出来事「彼女はコンクリートとお話ができる」と,再受験を決めて鬱々としている大学生のもとにやってきたセミ(を名乗る幼女)の恩返し「嘘つきセミと青空」は個人的には苦手な短篇なのだけど,好きなひとはおそらく好きだろうな,という感じ.あらすじで興味持ってなんとなく手に取ったのだけど,期待以上に楽しませていただきました.