カルロ・ゼン 『幼女戦記1 Deus lo vult』 (エンターブレイン)

幼女戦記 (1) Deus lo vult

幼女戦記 (1) Deus lo vult

あれが、英雄というやつなのかもしれない。つまり、常人とはどこかずれている。英雄を賛美するのは結構だ。だが、断じて英雄に続けとは教えない。教えるわけにはいかないのだ。士官学校とは、人材育成機関であって狂人を産む何かではない。

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2013年,東京.人事部所属の会社員だった男が目を覚ますと,1920年代ヨーロッパに似た異世界で金髪碧眼の幼女となっていた.生まれ持った魔導適正ゆえ,軍に徴用されることになったターニャ・デグレチャフ(彼=彼女)は,要領をもって帝国軍部でのし上がってゆく.
いわゆる架空戦記小説と言うのかな.ディテールにこだわっているのはわかるんだけど,全体のバランスがおかしい.「彼女が異常である」ことを18ページも描写する必要があるんだろうか.「PDCAサイクルも知らないのかね」と言った直後に地の文で解説を挟んだりとか,作者独自の解釈でいちいちイラっとさせてくれる脚注だとか,どう見ても頭の良いひとの書くことではない.それ以前にパートごとに語り手がころころ入れ替わってややこしいし,めんどうなテキストも目が滑る.まああとがきによると私は対象読者ではなさそうなので,手に取ったほうが悪いのかな,と(壁に投げつけながら).