パオロ・ジョルダーノ/飯田亮介訳 『兵士たちの肉体』 (早川書房)

兵士たちの肉体

兵士たちの肉体

あの野焼きの夜、家に戻る車の中で僕はパパの腕に抱かれて眠った。あんなに夜更かしをしたのはほとんど初めてだった。それでも朝には、ママに聞かせてやりたくてたまらず、頑張って早起きをした。ママは我慢強く、三度でも、四度でも同じ話を聞いてくれたっけ。もしかするとそれは、イエトリ上級伍長が予定し、胸に温めていた、死の直前に思うべきこととは違っていたかもしれない。でも、それでよかった。つまるところ、悪くない思い出だ。彼の人生はそう悪いものではなかった。

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アフガニスタンに派遣されたイタリア陸軍の若者たちの群像劇.アフガニスタンでの作戦行動という舞台を用意しながらも,戦争小説というより,はっきりと青春群像小説の体を取っている.チャット相手がネカマなんじゃないかと疑って鬱々する兵士とか,ガキ大将みたいな同僚に童貞君呼ばわりされるマザコン君とか.それぞれの心の動揺を,驚きはなくとも丁寧に描き出している.まあそれだけではないのだけど,戦争がもたらす何かを描いた小説ではない,と思う.