ひたき 『ミミクリー・ガールズ』 (電撃文庫)

「排泄の様な生理現象は人間性の担保でもありますから」

「人間性の担保?」

「脳と脊髄を取り出すバイオティック手術は、究極的には機械の体に繋げたり、人間離れした体に繋げたりする事も出来ます。ですがそれは人間と言えるでしょうか? 食事や排泄といった行為を残す事により、私達人工素体(ミミック)は人間性を保っているんです」

2036年、第三次世界大戦が勃発した。百年前のそれとは違う、“クリーン”な攻撃の飛び交う新しい戦争。しかし、生身の兵士の需要はなくならなかった。戦場で右手と両足を失い、バイオティック兵となった米国素体化特殊作戦群のクリス・アームストロング大尉は、潜入と取り残された大統領の娘の救助を命じられる。

第三次大戦という「新しい戦争」の最中にある世界。少女型人工素体(ミミック)をまとった特殊部隊と国際犯罪組織の戦いを描く。「可愛いは正義」を文字どおりの意味で体現した、第28回電撃小説大賞銀賞受賞作。東西あらゆるアクション映画と、銃器や兵器からネタとうんちくを拾ってコテコテに煮詰めた、稀に見るボンクラ小説。深見真と宮澤伊織を足して割らないようなボンクラっぷりが全面に発揮されておりちょう楽しい。米兵がきららアニメに癒やされて奮起する小説が『神々の歩法』、米兵自らがきららアニメのキャラクターになる小説が『ミミクリー・ガールズ』と覚えるといい。

今回の任務で少女型の人工素体が選ばれた理由付けも良い。そこから「人間性の担保」や顔を持たない、持てない、あるいは顔を捨てさせられた人間たちに触れていくのもめちゃくちゃに良い。素晴らしく好みのボンクラ小説でありました。



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