瘤久保慎司 『錆喰いビスコ』 (電撃文庫)

錆喰いビスコ (電撃文庫)

錆喰いビスコ (電撃文庫)

「お前は、俺よりずっと才能豊かで……人に、必要とされる人間だ。この先も、ずっとな」

ビスコは最後に一瞥をくれて、外套を翻す。

「先に死ぬとしたら、俺だ。お前はそこにいろ……すぐ、帰ってくる」

吹き荒れる《錆び風》により,文明は崩壊し,人類は滅びの危機に瀕していた.賞金首の赤星ビスコは,《錆喰い》と呼ばれるキノコを求めて師匠のジャビ,大蟹のアクタガワとともに旅をしていた.道中,ビスコは忌浜県で医者の猫柳ミロと出会い,成り行きで同道することになる.

第24回電撃小説大賞銀賞受賞作.錆に覆われたポストアポカリプスな日本を舞台にした少年マンガみたいな読み応えの冒険もの.読んでいくとナウシカ,「メタルマックス」,『ニンジャスレイヤー』,『トライガン』といったあたりが次々と思い浮かぶ.生き生きしたキャラクターといい,明快な勧善懲悪といい,わかりやすく大きなアクションといい,荒廃しながらも魅力的な世界(東日本)といい,良い意味で少年マンガを読んでいるような気分になる.イラストレーターが二人もついているし見開きイラストが複数あるところを見ても,ビジュアル面で力を入れているんだろうな.

バディものでもあるのだけど,バディものというには愛が深い.ほぼBLに足を突っ込んでいると思う.キャラクターの中でもアクタガワ(大蟹)が妙にかわいいのが楽しい.蟹というにはやたら巨大だしものは言わないし表情なんかも当然ないのに,これはどういうことだろう.良いものでした.上にあげたキーワードで気になるものがあれば読んでみるといい.続きも買わせていただきます.