針谷卓史 『前夜祭』 (二見ホラー×ミステリ文庫)

実際、彼が慢性的に負っている生傷について、それがどういう由来なのか、俺は知らない。

…………。

俺は知らない。

緋摺木高校学園祭の前夜。準備に追われて深夜残業していた教員たちは、いなくなった一人の教員が異常な状態で殺されているのを発見する。殺人犯がまだ校内にいることを警戒した教員たちは、朝まで職員室に閉じこもることを選択する。

開催されることのなかった学園祭の前夜祭。そこで何が起こったのか、そこに至るまで何があったのか。生徒と教師の視点からを描いてゆく。「世の中では、何を考えているのかわからない化け物のような奴が真人間の顔をして闊歩している」という一文に象徴される不条理な連続殺人、そして不条理な犯人と不条理な動機を叩きつけてくる。ミステリとしての体裁を保っていたのはわりと最初の方だけで、良くも悪くもひたすら不条理な殺人劇だった気がする。