分かっている。
そんなことでたやすくそそげる罪など、存在しない。
気休めだった。
でも、それでいい。
気休めがなくなってしまったら、もう息ができない。
――本当の呼吸なんて、生まれてから一度もしたことがないはずなのに。
電子犯罪捜査局を標的とした〈E〉事件。その首謀者、トスティの開発者は実在しない人物だった。引き続き捜査を続けるエチカとハロルド。そんな中、アミクスを狙う殺傷事件が発生する。それは二年半前、ハロルドの相棒が殺された連続殺人事件、「ペテルブルクの悪夢」の再演だった。
人間にもなれないくせに、人間に近づくというのは、とても中途半端でしんどい。
――そう。
もう、しんどいのだ。
模倣され、再演される「ペテルブルクの悪夢」。二年半前の始まりの事件とその後の現在を通じて描かれるのは、過去の贖罪と、各々の「人間らしさ」について。人間が考える人間らしさ、人間がAIに求める人間らしさ、AIが人間に提供する人間らしさ、AIが自らの敬愛規律から生むAIとしての人間らしさ……。人間を模倣する