水田陽 『ロストマンの弾丸2』 (ガガガ文庫)

「……あれ、もしかしてビークヘッド? 本物?」

「ハァイ、元気?」

道行く人々が未那に気づいて話しかけてくる。変声期越しでも疲れを隠しきれない声で、未那はその一つ一つに応えていく。走りながら。

「写真撮ってSNSにアップしていい?」

「もちろん。載せる時はハッシュタグをつけてね。『#BeakHead』、BとHは大文字、スペースはなしでよろしく」

ロストマンズ・キャンプで、神栖未那は“ビークヘッド”の活動を続けていた。治安維持に走る未熟な覆面のヒーローは、街のマスコットのような扱いをされながらも、徐々に受け入れられ、人々の「希望」になりつつあった。

「……お前は必ず殺す。最後に、最も残酷な方法で、殺してやる」

ばらまかれたドラッグが、炎の異能者が、不条理を何よりも愛するヴィランが、街に混沌をもたらす。一読しての印象は『スパイダーマン』と『バットマン』の換骨奪胎というか良いとこ取りというか。このテーマで目新しさはともかく、面白くならないわけがない。未熟なヒーローの成長や、周囲の大人たちの存在を非常にうまくまとめており、現代のヒーローものの要点をしっかり押さえた、読みやすいエンターテイメントになっている。なんだかんだ、読み終わってみると楽しかったです。



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