紙城境介 『継母の連れ子が元カノだった9 プロポーズじゃ物足りない』 (スニーカー文庫)

「きみは人一倍聡いのだろう。だからその歳で、早くも気付いてしまったんだ――自分の幸せが、『家庭』の形をしていない、ということに」

季節はクリスマス直前。いさなのイラストに魅入られた水斗は、彼女の才能を伸ばすことに熱中していた。ある日、結女の実父、慶光院と三人で会食をすることになった。良き父親になれなかった慶光院の告白を聞いた水斗は、自分と結女の幸せについて、将来について考えることになる。

永遠はどこにもない。

あるのはきっと、止め処ない変化。

そのすべてを乗り越えた人だけが、幸せに人生を終えられる。

結婚は人生の必須イベントではなくなり、恋愛は一部の人間の趣味になった。そんな現代において、永遠の幸せはあるのか。僕たちは話し合わなければならない。恋愛群像劇の第九巻。幸せは恋愛の形をしているのか高校生が語るには達観しすぎている気もするけど、そこへ踏み込み、大人たちから言葉をもらい、考えて話し合う。当たり前のことを当たり前に書かないこの過程が無茶苦茶うまいと思うし、最高にわくわくした。楽しかったです。

「迷いは、晴らすものではありません。付き合うべきものだと、思います」