及川輝新 『俺の背徳メシをおねだりせずにはいられない、お隣のトップアイドルさま』 (MF文庫J)

「……でもアイドルは、みんなの希望を、願いを、夢を引き受けるための器だから。みんなの理想で容れ物をいっぱいにして、それを体現するのがアイドルなの。素の自分なんて邪魔なだけだよ。私は早く自分を捨てて、みんなのために……」

「なら訊くけど、『みんな』の中に優月は入っているのか?」

父親の仕事の都合で新しいマンションに引っ越した高校生、真守鈴文は、お腹を空かせて倒れていた隣人を助ける。その隣人は、人気アイドルの有須優月だった。仕事のために過度な食事制限を続けていた優月を止めるため、鈴文は優月をメシ堕ちさせることを決意する。

アイドルは男子高校生をファンにするために。男子高校生はアイドルをメシ堕ちさせるために。お隣に住むふたりのまごうことなき戦いが始まる。第19回MF文庫Jライトノベル新人賞優秀賞。「背徳メシ」というだけあって、出てくる料理は豚丼、ドリア、揚げ物ほか基本ハイカロリー。そんな脂っこいものを、トップアイドルが「♥」をつけながら食べまくる様を眺める。なるほど背徳、そして甘酸っぱい。正統派で毒のない、ラブコメらしい良い料理ラブコメでした。