饗庭淵 『対怪異アンドロイド開発研究室』 (角川書店)

「では、怪異とはどういうものなのですか?」

「知るか! それがわかりゃ苦労はしねえ。学者は決まって、その『わからない』に挑むのが科学だって意気込むがな。たとえ科学が怪異を解明することが可能だとしても、人間には無理だ」

「なぜですか?」

「人間の認知能力には限界があるからだ」

怪異検出AIを搭載した対怪異アンドロイド、アリサ。人の姿を持ちながら、機械ゆえに呪いも祟りも受け付けず、恐怖心もない。怪異が出ると噂されるスポットに派遣され、調査を続けるアリサは、どのようなデータを持ち帰ってくるのか。

第8回カクヨムWeb小説コンテストホラー部門特別賞。AIと怪異のすれ違いコントで始まり、いかがなものかと思ったらちゃんと怖かった。人型だからこそ寄ってくる怪現象、AIだからこそできる語り、そして人型AIだからこそ認知できる怪異。いくつもの仕掛けが、とぼけたテキストに隠されている。人型AIのフレーム問題と怪異探知の問題は掘り起こせばいろんな話が作れそう。シリーズもっと読んでみたいな。