三船いずれ 『青を欺く』 (MF文庫J)

「――映像って不思議ですよね。それがいくらウソだったとしても、見る人にとってはそれが『真実』になる。そうして、観る人の記憶にはその真実だけが残り続ける」

「へ……?」

「先輩がそんな世界に飛び込んだら。どんなウソをついてくれるんでしょうかね」

高校生、城原千太郎は、空っぽな自分を隠し、他人の仮面を被って日々をやり過ごしていた。ある日のこと、バイト先に現れた後輩にして自称「映画監督」、霧乃雫に声をかけられる。「ウソつきは、役者のはじまり」という雫は、千太郎を映画作りに引きずり込む。

ウソつきの高校生と、そのウソに惚れ込んだ後輩女子。ウソから始まる四人の高校生の映画作りを描いた、第19回MF文庫Jライトノベル新人賞優秀賞作。創作とウソ、「本物」と「偽物」の違いや、創作することの動機とエゴを真正面から捉えた青春小説。仲間も増え、順調に進んでいるかのように見えた映画製作に、ウソと強烈なエゴ浮かび上がる。映画や舞台をテーマにしているだけあってか、ヒトの肉体の表現や景色の描写が本当に美しい。ウソと創作から始まりウソで終わる本物の青春。傑作だと思います。