第10回電撃ゲーム小説大賞選考委員奨励賞受賞作．
ちなみに本作品のコンセプト（のようなもの）は『詩的で童話チックな、なんとなく美しい話』です。読み終わった後に「ああ、なんとなくわかった」と思って頂ければ嬉しいです。童話のように暖かく、切なく、心に残る。そんな作品に少しでもなっており、なおかつ読者の皆様に好まれればいいのですが……。
（「あとがき」より）
4本の短編連作で，そのひとつひとつはよくまとまっていると思う．破綻しているところは見られなかったし，文章も読みやすくその点では完成度は高いという印象を持った．
ただ，物語的にはそれほど見るべきところは無かった．あまりにも分かり易すぎるというか登場人物が善人に過ぎるというか．一言で表すなら，非常に「きれいで純粋な」小説．そういう意味では確かに「詩的で童話チックな、なんとなく美しい話」であり「ああ、なんとなくわかった」という気にはさせられたけれども，強烈な刺激を受けるわけでもなく，読後感もあっさり．ちょっと物足りなかった．
上に書いたように文章能力は高い作家だと思うのでアイデアさえ追いつけば次回作以降にはかなり期待できると思う．
