田中啓文『銀河帝国の弘法も筆の誤り』 (ハヤカワ文庫JA)

銀河帝国の弘法も筆の誤り (ハヤカワ文庫JA)
なんといっても表題作が秀逸.

「九年間? 九年間も座って、いったい何をしておったのだ」
「おそらく何かを思案していたのでしょう」
「ダルマが思案する……ダルマ思案……一〇一匹わんちゃんか……」
「何かおっしゃいましたか?」
「い、いや、何でもない。九年間も思案を続けて、そのあとダルマ大師はどうなったのだ」
「おそらく仏になったと思われます」
「なんという仏だ」
「思案化合仏では……」
「何か言ったか?」
「い、いえ、何でもありません。とにかくゼンの始祖ダルマ大師はそういう人物なのです」
「そいつを呼べ!」
「無理です」
「どうしてだ。<人類圏>最高会議議長の命令がきけぬというのか。わかった、笛を吹けば来るのではないか? 『ダルマ大師ーっ!』ピポロピー。アースが生んだ正義はダルマー」

凡人にはここまでのダジャレは使えんな.
ダジャレに加えてグロ(ゲロ)ネタもあるので田中啓文を読んだことのない人にはどうにも薦めづらい作品集になってる気が.ただしネタそのものは『蹴りたい田中』ISBN:4150307628)よりわかりやすかったし,うえで引用したようにテンポがいいので癖になってやめられなくなる魅力がある.なんといっても声を上げて笑えて,しかもきちんとSFやってる小説なんてそうそうないよ.堪能しました.8.0.

「イッツ・嘔吐・マジック……」