- 作者: 田中啓文
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2010/09/25
- メディア: 文庫
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いつまで見ていても飽きなかった。何万匹ものミミズたちの作りだす美しいフォルム。それは、完璧の美を表現したかと思ったら、直後にすぐ、惜しげもなくそれを崩し、また新しい頂点を目指して進んでいく……そんなミミズたちの「生」が私の心を浄化していった。
ミミズからの伝言
「ミミズからの伝言」,「見るなの本」,「兎肉」,「秋子とアキヒコ」,「牡蠣喰う客」,「赤ちゃんはまだ?」,「糞臭の村」の七篇を収録.個人的にベストは「赤ちゃんはまだ?」かな.「中間小説誌に発表したものだが、このあと同誌から二度と注文がなかった」(あとがき)のもとても良くわかるが,いかにもこのひとらしいラストは誰がなんと言おうと素晴らしい.次に好きなのがこれまたひどい「兎肉」,〈人類圏〉シリーズのひとつでゲテモノ喰らい注意な「牡蠣喰う客」.収録作品が全部ホラー的なのは当然として,スプラッタ,グルメ,ダジャレ,伝奇,SFという田中啓文らしい要素が多岐に盛り込まれていて,カバーしているジャンルも幅広い.ファンはもちろん,田中啓文がどんな作家かを知るために手にとってみてもいいかもしれないね.