小川一水 『復活の地 III』 (ハヤカワ文庫JA)

復活の地〈3〉 (ハヤカワ文庫JA)

復活の地〈3〉 (ハヤカワ文庫JA)

震災復興(だけではない)シミュレーション小説完結.
「災害が再び発生することがわかっており,その時期も特定されている」「政府の協力は得られない」という特殊な条件を設けたうえで,被害を最小限にするにはどのようにすればよいのか.数字でのシミュレーションはもちろん,人々の思惑(民衆から政治家まで),星外各国の権謀まで計算された跡が窺えて,その迫力に途中から目が離せなくなってしまった.
多くの人々や民衆(一部を除き)が災害に際しかなり理想的(或いは理性的,理知的)な行動を見せるため,「実際にはこううまくはいかないんじゃないか?」という疑問符が頭に浮かんだが,これは作者が望む災害対策の理想を描いたものなんだろう,と思う.震災に協力し合い立ち向かう人々の活躍は,読んでいて単純に気持ちいい.
セイオとスミルがどう惹かれあったのかがわかりにくい(単純に描写が少ないせいだろう)のがひとつあるけど,まあそこはむしろおまけみたいなものかな,という認識.
全三巻,堪能しました.