坂本康宏 『逆境戦隊バツ[×]1』 (ハヤカワ文庫JA)

逆境戦隊バツ「×」〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)

逆境戦隊バツ「×」〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)

チビハゲデブの20代後半童貞オタクがひょんなことからヒーローになって戦う話.バカ小説を目指しているのはよくわかるんだけど,ディテールがかなり弱い.ダメ社員のダメさの描き方やクルミレンジャーの組織構成など,ちらほら甘さがあるような.理屈より情に訴えるように書いている印象を受けたのだけど,理詰めで埋めていってほしかったかな.テーマの割りに共感(イタさ)も緊迫感も薄かった.若ハゲが如何に悲惨かを滔滔と訴えかけるかのように説いてくれていてそこだけは痛いほど伝わってきましたが ('A`)
一方で伏線の張り方はかなり上手いと感じた.敵の正体やいくつも残された大きな謎はどうなるのか,少しずつ焦らすような見せ方はかなり良かった.この辺,上に書いたバカ小説的部分と乖離しているけど,純粋に面白い.オタ向けバカ小説を狙わず素直に書いていれば普通に面白い作品になったんじゃないかしら.とにかく続きが気になるのは確かなので引き続きチェックするよ.
しかしはてなで探した限りではぜんぜん読まれてないなぁ.同日発売の「マルドゥック」ばかり見つかる.こちらも地味に2ヶ月連続刊行なのに(私も今日知ったけど).