森橋ビンゴ 『チョコレートゴシップ』 (角川書店)

チョコレートゴシップ

チョコレートゴシップ

恋物語4+1篇の短編集.ゲイ・レズ・女装その他をテーマにしっとりと描いている.理屈より情に訴える印象の,いかにも一般文芸といった趣の一冊.それだけにひとを選ぶ側面はあるかも.とはいえ,少年少女を題材とした一連の作品で見せた森橋ビンゴの作風は健在.どの短編も余韻があって良かったと思う.まあしかし一話ごとのシチュエーションだけ見れば下手なラノベよりファンタジックかもわからんかな.
以下感想.ネタバレを含むので注意.

『メンソール・ベイベ』

二人のゲイとひとりの女の三角関係.千早が現れてからの話運び,そして特にラストには少し,いやかなり首を傾げた.

『夕焼けブランコ』

かなり変態的なシチュエーションを,性的なにおいを極力抑えて淡々と描いている.扇情的に描くことはいくらでも出来た筈だと思うけど,この話はたぶんこの描き方が正解.読み手の想像力に解釈が委ねられている印象はあったけど,これはこれで嫌いじゃない.良かった.

『アメ車とグルメと太陽と』

キャラ造形がいちばんラノベっぽいと感じたのだがどうか.男ひとりと女二人の恋情の絡まない友情,ってのは個人的にツボ.ただその崩壊が第三者的要因からくるのは物語としてはどうなのだろう.「ボク」のまったく与り知らないところで二人の女友達との関係が変容し,そしてあのラスト.読者への精神的負担を最小限にしつつ,話を穏便に片付けることを意図してのものかもしれないけど,個人的にはあまり気に入らない.

『スナヲナキミト』

平凡な男と美形のレズビアンの,ただの愛情ではない,ただの友情でもない,そんな話.曖昧な感情を最後まで曖昧なまま描いており,やっぱり読者の解釈に任せているのかな,と思う部分多々.特にラストの対面はどう解釈したものか自分には正直よく分からない.でも砂緒がアパートを訪ねてきた場面など,雰囲気はすごく良いと思う.この短編集の中ではいちばんの好みかな.

『ボクの話 ─チェリー オン ザ チョコレート ケーキ─』

幕間劇.過分にポエジーだけどまあアリでしょう.特に2話目.