万城目学 『ホルモー六景』 (角川書店)

ホルモー六景

ホルモー六景

鴨川ホルモー』第二幕.鴨川ホルモーの裏で起こっていたサイドエピソードや人間模様を綴った短編六編.帯には「続編」とあるものの,実際の立ち位置は長編ラノベや時代小説の番外編みたいな感じ.テキストはいくぶん落ち着いた感じで『鴨川ホルモー』には多分にあった森見さん風味は薄れたけれど,ユーモラスで濃いキャラクターたちの見せ方は健在.ベタでクサいエピソードもたっぷり含まれたユーモアでもってつるりと読める.上手くなったのは間違いないのだけど,意地悪な言い方をすれば癖がなくなったとも言える.「普通の売れ筋作家」の作品を読んでいるような感覚.うまく運びすぎな話が多いのも気になったといえば気になった.
個人的には「もっちゃん」がベストエピソードかな.強烈なキャラクターと後半での種明かしが面白すぎた.次が「ローマ風の休日」.普通にいい話なんだけど,凡ちゃんのビジュアルイメージが強すぎて妙なおかしみが湧いてくる.