飯田雪子 『クリア・ヴォイス』 (GA文庫)

クリア・ヴォイス (GA文庫)

クリア・ヴォイス (GA文庫)

15歳の探偵見習い少女の初仕事.ぱっと読んだ感じではいかにもな少年向け探偵小説といった風情.……なんだけど,脇の甘さもかなり目立つ.職に就いて1ヶ月なのにベテラン並みの落ち着きを見せたかと思ったら急に年齢相応の行動をしてみせるといった,花南の描き方に一貫性が無かったのがいちばん気になった.少女の成長譚として読もうとするとまず最初に花南の能力の高さを見せつけられたあと,だんだん頼りなくなっていく様子を読まされるという,なんだかよく分からない構成になっている.作者の都合,っていったらそれまでだけど.
作中にじわじわ漂う違和感を晴らすクライマックスや,父親への信頼を体現する花南の行動など,部分部分に「おっ」と思わせられることはあったんだけど,全体としてはいまいちだったかと.