清野静 『時載りリンネ! 1 はじまりの本』 (スニーカー文庫)

時載りリンネ!〈1〉はじまりの本 (角川スニーカー文庫)

時載りリンネ!〈1〉はじまりの本 (角川スニーカー文庫)

「胸をはるの?」
「そう。いつも心の中に風を吹かせるの。何か素敵なことが起こった時、心を響かせられるようにね。女の子はいつも颯爽としてなくっちゃ。それから、ときめきを忘れちゃダメよ。わくわくしたり、うきうきしたりする気持ちを大事にね」
「それならまかせて! そういうのは得意だわっ」
リンネが勢いこんで言うと、老婦人は目尻に皺を溜めて微笑んだ。

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第11回スニーカー大賞奨励賞受賞作.これは素晴らしい.海外のジュヴナイルのような瑞々しい文体にまず心躍らされ,中盤のリンネとルウにふにゃけさせられ,終盤の冒険とバトルと出会いにわくわくしみじみ.読む手が止められなかった.ストーリーの軸はそう目新しいものでもないんだろうけど,少女への愛と書物への愛が物語の端々から強く伝わってきた.
「少女」というとラノベのひととしては桜庭一樹が真っ先に思い浮かんだわけなんだけど,比較するとこちらには冒しがたい神聖性みたいなものは薄く(無いわけではない),可愛らしさとか純真さとか,より親しみやすい描写が強かった.要約するとかわいいは正義書物愛のほうも,わかるひとにはじんわり伝わるような描き方を随所に挟んでおり,にやけさせられた.
つーわけで凄ぇ面白かったです.ストーリーは1巻だけで綺麗にまとまっているので続編が出ることに若干の不安があるのが正直なところなんだけど,それを吹き飛ばすようなものを期待したいです.