三日月 『さちの世界は死んでも廻る』 (ガガガ文庫)

さちの世界は死んでも廻る (ガガガ文庫)

さちの世界は死んでも廻る (ガガガ文庫)

第1回小学館ライトノベル大賞・期待賞受賞作.地の文が通り一遍で固く,ギャグが完全に上滑りしている.「既死者」が生まれるのはいいとして,ひととして意思を持ったものを「昇天」させちまうことに対する考えや詰めが甘くていらいらする.ほか全編にわたって粗い,というより未完成な面が目立ち,首を傾げること多少.「既死者」と「執行人」の恋愛といったアイデアや,二人の関係の変化の様子は面白いと思う.特に後者は最近のライトノベルではあまり見ない類の,幾分ひねったもので良かったのだけど,なんつーかアイデアを表現しきるには技術が足りなくてすべてが描ききれてないようなもどかしさも読んでてかなり感じた.「期待」賞ってのはそういう意味なのかぁ.この一冊だけ読むと正直いまいちだったけど,87年生まれの作者だけに受賞どおり私も今後に期待したい,ってことでひとつ.しかしどこの世界もそうだけどどんどん若いひとが出てきて我が身を振り返るたび溜息が出るわ.20歳なんてついこないだのことだと思ってたのによう ('A`)