犬村小六 『とある飛空士への追憶』 (ガガガ文庫)

とある飛空士への追憶 (ガガガ文庫)

とある飛空士への追憶 (ガガガ文庫)

次期皇妃ファナを乗せての単機敵中翔破を命じられた飛空士シャルル.その距離,12,000 キロ.
すんげぇ良かった.二人きりの空で,着水した夜の翼の上で,整備のために寄った島で,変化していく双方の心情が非常に丁寧に綴られる.実は過去に出会っていた二人は互いに惹かれあうも,階級の違いや政治的思惑という壁が立ちはだかる.その強い絶望感や葛藤はもどかしく重苦しく,手に取るように伝わってくる.

「地上のことがくだらなく思える瞬間はあるかも。空のなかでは身分なんて関係がないから」

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空戦のシーンも圧倒的な迫力とスピード感をもって描かれる.性能差のある敵機に追われる恐怖や迫力はミリタリーに疎い私でも容易に目に浮かび,手に汗握る.
そして尊ささえ感じる二人のラスト「ダンス」.

『踊ってよ、シャルル』

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id:deltazulu さん評して曰く「紅の豚」.確かにスタジオジブリの作品のような丁寧な仕事をした,非常に完成された一冊だと思う.素晴らしかったです.