白鳥士郎 『らじかるエレメンツ』 （GA文庫）

らじかるエレメンツ (GA文庫)

無目的で自堕落ながら楽しい日々を送っていた化学実験部．そんな化学実験部に生徒会長から夏休み明けまでに何らかの実績を上げなければお取り潰しとの通達が来た．手っ取り早く実績を上げられる手段はなんだ？　スポーツチャンバラだ！
部活を中心に描く学園コメディ．部活といってもこれといった目的は特になく，光画部か現視研あたりを思い浮かべてもらえれば大きく外してないと思う．淡々とした，それでいて軽快なテキスト運びが上手く，だらだらしつつもお気楽な「青春を静かに気持ちよく浪費している」的な空気はよく出ていた．オタネタはかなり目立っているもののそっち方向に強く引っ張りすぎないのも良かった．
しかし後半になると途端に話がぎこちなくなる印象．テンポが悪くなり，ギャグもどこかで見たようなものが多くなる．思うに，色恋や熱血といった「目的」が中心に据わると話運びが強引なものになってしまうのかな．ひとことで言えば不器用．ちょっと惜しかった．
といっても前半の印象はかなり良かったし，「日常」をベースにした物語を描ける新人は貴重（かな？）．個人的には前半のノリを一冊かけて完結させるような話を描いてほしいな，読んでみたいなと思った．終始一貫，だらだらしたまま燃えずに終わる青春物語があってもいいじゃない．今後の活動に注目してます．